第4話 方向音痴
私は筋金入りの方向音痴だ。デパートから帰ろうとして、出口を見つけようと散々うろうろしたところ、気づいたら結局2階をさまよっていただけだった、なんて経験はざらである。
休日に目的地を決めずに、ドライブをした時の話。適当に車を流していたら、だんだんと交通量も減り、風景も寂しくなっていった。そのうち案内標識に見慣れない街を見つけたのでなんとなく、そちらにハンドルを切ってみた。
程なく目的地に着いてみると、そこは人影が全くなくゴーストタウンのようだった。最後の看板には、「○○鉱山」と書いてあったので、廃坑にでもなったのだろう。ついでと思って、車を降りてその辺を歩いてみた。
だが、何かがイマイチしっくりとこない。何故だろうと考えてみると、ゴーストタウンにしては、家屋も高層棟もそして道路も、全てが新しすぎるのだ。まるで昨日までみんなが住んでいて、生活していたとしても不思議ではない雰囲気である。ただし生活感は全くない。街からヒトだけが急に消えてしまったような感じだ。だんだん怖くなってきて、車に戻り足速に街を立ち去った。
その後、その街には行っていない。怖いのも理由の一つなのだが、方向音痴のせいで、そもそも、どこをどう行ったのか全く覚えていないのだ。
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