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第20話 墜落現場

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  昔、男子寮にいた時の話。夜寝ている時、毎晩のように金縛りにかかっていた。そしてほぼ毎回、金縛りの最中にはドアノブをガチャガチャ回す音がする。  昼寝の最中にも金縛りとドアノブの音に悩まされていた。金縛りが解けた後同室の同級生に、今ドアノブガチャガチャ言ってなかった?と聞いても、そんな音はしないという返事だった。  そんなある日、寮監の先生が部屋を訪ねてきた。ちょっとした用事を済ませた後、何の気なしに寮監の先生に金縛りとドアノブの話をしてみた。寮監の先生は、ちょっと驚いた顔をした後、こんな話をしてくれた。  この寮は何回か増築しているのだが、何回目かの増築工事の時に死者が出ている。高所から足を滑らせてそのまま地面に…ちょうど一階のこの部屋のドアの外側あたりが墜落現場だ。  頻繁な金縛りとドアノブのガチャガチャ音は、私に何かを伝えたくて、なっていたものだったのだろうか。

第19話 すいません…

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    今朝の出来事。私はいつもスマホの目覚ましで朝起きているのだが、今朝は、うっかり二度寝をしてしまった。  それから程なく、スマホから「すいません…」と声が聞こえた。びっくりして飛び起きると遅刻寸前の時間だった。身支度には慌てたものの、なんとか事なきを得た。  身支度をしながら、今のはなんだったんだろう、と考えてみると、どうもSiriが何故か起動して「すいません…」とだけ答えて切れたらしい、という考えに至った。とはいえ、何故そんな誤作動が起こったのかは全くの不明だ。  いずれにせよ遅刻はしなかったのだから、まあいいかと深く考えることは止めにした。

第18話 夢見が悪い

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    第14話 シートベルト の後日談。亡くなった母方の祖母は、いわゆる「夢見が悪い夢」を見る人だった。主に人の生き死にや怪我などに関する夢を見ていたようだ。たまに我が家にも夢見が悪いから、と気をつけるようにとの連絡が入っていた。  父が交通事故で首の骨を折る重傷を負った時も、祖母は不思議な夢を見ていたそうだ。  暗闇に父が正座している。祖母が近づいていくと、父は自分の首を何度もなでながら、必死に何かを訴えかけている。言葉は聞こえない。それを見て祖母は、わかった、わかった、と何度も父に返事をする。そんな夢だったらしい。  祖母は、夢の中では、わかった、と言ったものの、何をわかったのかも含めて、その夢の意味が分からなかったらしい。事故が起きてからそういう意味だったのかと合点がいったそうだ。  そのほかにも祖母の夢見については話があるが、それはまた別の機会にしたいと思う。

第17話 左耳

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    私の家族は皆左耳が悪い。母は子供の頃高熱を出した時に左耳が聞こえなくなった。妹は生まれつき左耳が聞こえづらい。父は事故で左耳の聴力がほとんど無くなった。その事故というのに私は絡んでいる。  母に訊ねると、私が2、3歳の頃のことらしい。記憶を辿ってみると…父が立ったまま耳かきで耳掃除をしている。それを見た私はチャンスだと思い、思いっきり父にぶつかっていく。次の場面では、父が高熱を出して床に伏せっている。  うまくいった、そう私は思っている。そんな記憶だ。それ以来父は左耳がほとんど聞こえない。子供の悪戯にしては酷い内容だ。なぜそんなことをしたのかもよく覚えていない。まるで誰かに操られていたかのようだ。  そんなことがあってから、私は物心が付いてから、左耳の掃除をする際、必ず周りに誰かいないか気にするようになった。あの時の私のように、急に誰かが飛び掛かってきては大変だ。そんな努力も虚しく、利き耳でである私の左耳の聴力は少しずつ低下してきている。理由は不明だ。  私の家族の左耳が皆悪いのは、単なる偶然なのだろうか、それとも何かの因果なのか。