第3話 13対1
受験生の頃の話。寮の二人部屋で、朝晩受験勉強に明け暮れていた。そんな中、ほんの息抜き、楽しみの一つが、別な部屋の友人がこっそり寮に持ち込んでいた、携帯テレビ(携帯電話もない時代)を観ることだった。
私は熱狂的な、野球のLチームのファンなのだが、その日は、チームが勝てばリーグ優勝を決める大事な試合の、テレビ中継がある日だった。私は友人に頼み込んで、携帯テレビを借り、勉強の合間に応援観戦するつもりだった。
同室の友人は、私が携帯テレビを借りてきたのをみて、今日は何かあるの?と尋ねてきた。これこれこういう理由で、と私は返答すると、友人はイタズラっぽく、「今日は負けるよ。」と言った。
単なるいつもの冗談のやりとりなのであるが、熱狂的なファンの私にとっては冗談どころではなく、すぐさま「今日は13対1で勝つね!」と返した。
どちらともなく「え?」「何その点数。」と声が漏れた。野球好きの方ならお気付きだろうが、試合でそんなスコアになることは滅多にない。私も特に考えなしに、口をついて出た言葉だったので、理由も説明もできず、とにかく勝つんだから!と言葉を継ぐのが精一杯だった。
数時間後、試合が終わり、結局、贔屓のチームが優勝した。スコアはいみじくも、13対1だった。「ほら13対1だったでしょ!」と得意げにいう私。友人は狐につままれたような表情で私を見ていた。
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