第11話 ため息
昨日のことである。病院で働いている妻が体験した話。妻はいつものように、病院のゴミ集積所に廃棄物を出しに行った。ゴミ集積所の隣には、やすらぎの間、つまり霊安室があり、二つの施設の外への出入り口は共用になっている。
妻が廃棄物を分別していると、大きな音で「はぁ〜」とお婆さんのため息が、はっきりと聞こえた。病室の患者がつく、ため息の声とよく似ていたので、誰かいるのかと思い、あたりを見回したが、誰もいない。
今でこそだれもいないが、その日は3人の方のお見送りがあった日だったので、つい先ほどまで遺族や看護師、業者などでばたばたしていた空間だ。見送られる側もやっと一息ついたのかもしれない。
こういうこともあるものだな、と妻は妙に納得して、淡々と私に話しをしてくれた。
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