第17話 左耳
私の家族は皆左耳が悪い。母は子供の頃高熱を出した時に左耳が聞こえなくなった。妹は生まれつき左耳が聞こえづらい。父は事故で左耳の聴力がほとんど無くなった。その事故というのに私は絡んでいる。
母に訊ねると、私が2、3歳の頃のことらしい。記憶を辿ってみると…父が立ったまま耳かきで耳掃除をしている。それを見た私はチャンスだと思い、思いっきり父にぶつかっていく。次の場面では、父が高熱を出して床に伏せっている。
うまくいった、そう私は思っている。そんな記憶だ。それ以来父は左耳がほとんど聞こえない。子供の悪戯にしては酷い内容だ。なぜそんなことをしたのかもよく覚えていない。まるで誰かに操られていたかのようだ。
そんなことがあってから、私は物心が付いてから、左耳の掃除をする際、必ず周りに誰かいないか気にするようになった。あの時の私のように、急に誰かが飛び掛かってきては大変だ。そんな努力も虚しく、利き耳でである私の左耳の聴力は少しずつ低下してきている。理由は不明だ。
私の家族の左耳が皆悪いのは、単なる偶然なのだろうか、それとも何かの因果なのか。
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